意識をそこに向ける

バスの運転手さんが発信させる時や右折の際など、指でドアミラーを指しているのを見たことはないでようか。

指差し確認ですね。

車が来ていないか、歩行者はいないか、確認しているんですね。

中には「よしっ」と言って声を出している人もいるかもしれません。

これは動作を付けることで、声を出すことで、意識をそこに向けるという意味があります。

みんな誰もが「気を付けて」いるんです。

でも、忘れてしまう、見逃してしまう、事故を起こしてしまうんです。

漫然と見ているだけでは人間の脳は情報を処理していないのかもしれません。

動作を付けることで、脳に「ここの情報をきちんと処理してよね」と伝えているのかもしれません。

保育園バスに置き去り防止装置が設置されました。

エンジンを切ると「人がいないか確認してボタンを押してください」などとアナウンスが流れます。

漫然とエンジンを切って、車から離れようとする人には一定の効果があると思います。

だって車内後方のボタンを押すまでこのアナウンスは止まらないからです。

「おっと忘れてた。ボタンを押さないと」

でも、ちょっと待ってください。

注意しなければいけないのは何でしょうか。

ボタンを押し忘れないことでしょうか。

違いますよね、子どもが残っていないか、置き去りにされていないか確認することですよね。

置き去り防止装置は漫然と車から離れようとするドライバーには効果がありますが、意識を子どもが残されていないか注意することには本質的には効果はありません。

そのうち、子どもがそこにいるにも関わらず、ボタンを押して施錠して車から離れるドライバーが必ず現れます。

「そんなバカな」

そう、そんなバカなことが起こるはずがありません。

でも実際にそんな起こるはずのない事故で何人も子どもが亡くなりました。

我々一人ひとりが意識を子どもに向けようとしない限り、事故は無くならないのです。

ある保育園の園長先生とこんな話をしました。

「添乗の先生に、『先生、忘れ物がないか確認してね』と言って確認してもらいました。『ハイ、確認しました。』と言ってその先生が降りた後にもう一度車内を確認したら、園児の帽子、落ちてたんですよね。」

ちゃんとその先生は確認したんです。

歩いて車内後方まで見ていました。

でも、しゃがんで、指差して確認まではしなかったんです。

「園長先生ね、ベテランの先生はすごいよ。ちゃんとしゃがんで、覗いて見て、『ほうら○○ちゃん、帽子忘れてるよ』と言って見てたんですよ。」

子どもを預かる保育現場の先生方はこれまでこうやって子どもに意識を向けていたんです。

ちゃんとしゃがんで、動いて、子どもを確認していたんです。

意識をそこに向ける動作、行為、行動を習慣化して身につけていたんです。

だから事故がなかったんです。

それを聞いて園長先生は仰いました。

「今、その技術が継承されていないのよ。」

ベテランの先生方の所作を見て、真似て、技術を盗む努力と、それを伝える機会が少ないとも。

滝山ネイチャークラブでは保育中、顔を上げる動作「ルックアップ」、周囲を見渡す動作「ルックアラウンド」を習慣化するまで身につけます。

周囲の子どもにも意識を向けるということを顔を上げるという動作を通して、実際に確認し、自分自身にも他の子どもを確認するということを意識づけるためです。

堀岡が時折、周囲を見渡して、指を指したり腕を伸ばしたりしているのは、周囲の状況と子どもの居場所を確認しているからです。

保育技術で事故は減らせる。

子どもの安全を守るのは、最新のテクノロジーでもなければ防犯カメラでもない。

最後には人間の力、保育者の力が必要なのです。

私たちは日々保育力を高め、事故のない、安全な活動にしてまいります。

森のようちえんの滝山ネイチャークラブ

代表 堀岡正昭

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