保育の世界では昔から
「木を見て森を見ず」ということが言われてきました。
木を子どもに、森を全体に例えて、目の前の子どもと全体を見ることを伝えてきました。
よく新人の先生は、「木を見て森を見ていない」と注意され、反対に慣れてくると「森ばかりを見て、目の前の子どものことをおろそかにしてはいけない」と指摘されたものです。
「どっちが大事なんですか」
と聞かれたら、「どっちも大事です。」と答えます。
でも、理屈ではわかるけど、実際にやるのはとても困難だということに気が付きます。
私はよく実習生に、「今は、目の前の子どもを8の割合、全体を2の割合で観察するようにしてごらん」と説明します。
その場の状況で、目の前の子どもに対する注意や観察を意識の上で8の割合で観察し、意識の上では全体を見るということを2の割合で観察するようにするのです。
具体的には、「子どものことを見ている時に、たまに顔を上げて全体を見てごらん。他の子は何をして遊んでいるかな。他の先生は何をしているかな。と注意をちょっとだけ周囲に向けてごらん。」と話をします。
サッカーの技術で「Look up(顔を上げろ)」という言葉があります。
ボールを持った足元ばかりに気を取られていないで、全体も見まわし、周囲の様子も気にかけろということです。
この技術を応用して、保育の実際においても、目の前の子どもにだけ注意を向けるのではなく、顔を上げて全体を見ることでその人の観察力が上がります。
しかし、いつも周りをキョロキョロしていたら、目の前の子どもにしてみたら、「先生、よそ見していないで、こっち見て!」となります。
私たちは専門職なので、子どもに全体を見ている、ましてや注意が自分に向いていないと悟られてはいけません。
あくまでも、「先生はいつも君のことを見ているよ。」というメッセージを投げかけていたいものです。
この目の前の子どもと全体の割合が変わる場面があります。
活動の切り替えや緊急時などは、もちろん目の前の子どもも大事なのですが、全体の子どもの方向性や安全が優先されます。
その時には、目の前の子どもを1、全体は9、1:9の割合や2:8の割合になるかもしれません。
それを意識して「木を見ながら森も見る」のです。
私たちは、目の前の子どもも全体の子どもたちも大事にしながら、安全で、一人一人の気持ちに寄り添い、保育していくのです。
この観察のマインドとスキルを身に付けることで保育の質が格段に向上します。
ソトアソビスクールで繰り返し体験して習慣化させましょう。
習慣化すれば当たり前のように子どもと全体を見ることが出来るようになります。
「分かった」を「出来た」に変えて、「なりたかった自分」になりましょう。
子どもと笑顔で関わる保育者を増やします。
ソトアソビスクール
代表 堀岡 正昭