子どもが「抱っこして」と言ってきたら?

子どもと関わっていると子どもの方から「抱っこして」と言ってくることがあります。
これは甘えの表現で、信頼できる人に対して安心感を求めて抱っこしてと言ってくると理解していいでしょう。
昔は「抱き癖」がつくからと子どもは抱っこしない方がいいと言われたことがありました。
アメリカの小児科医ベンジャミン・スポックが「個人の自立を促すため、泣いても抱っこせず泣かせなさい」 とその著書『スポック博士の育児書』で書いたことによるものです。
もちろん今はそんなことを言う人はいません。
抱き癖なんてつきません。
子どもが抱っこしてと言ってきたらどんどん抱っこしましょうというぐらいです。

では子どもがふざけて叩いてきたら?足にまとわりついたり、背中に乗ってきたり、挙句の果てには悪態をついてくることだってあります。
「どうしてそんなことをするの!」
怒りたくなることもあります。
普段一緒に遊んでくれたり、親しい大切な人であれば、相手を傷つけようと思ってこんなことをする子はいません。
これは明らかに甘えの表現です。
本当は正面から、「甘えたいんだ。抱っこして欲しいよ。」と言えればいいのですが、そんなことは言えません。
言葉の獲得の幼さがあったり、もしかしたら他のお友だちの手前プライドが邪魔して言えないのかもしれません。
甘え方の表現方法を知らないのかもしれません。
「どうしてそんなことをするの!」
と怒るのではなく、
「遊んで欲しいんだね。」
と正面から向かい合って、ぎゅっとハグしてあげるとうれしそうにしたり、恥ずかしそうにしたり、そのうち叩いたり、痛くするような問題行動はなくなっていくと思われます。

子どもは安心したら自分から遊び出していく

ところがこの抱っこをいつまでもしている場合があります。
先ほど抱き癖はつかないと言ったばかりですが、子どもに抱き癖はつきません。
大人の方が抱き癖がつくのです。
子どもの不安の解消ではなく、子どもが安心して離れようとしているのに離さない。
ある保育園の園長先生は、「身体拘束」だという方もいます。
子どもは抱っこされて安心したら、外の世界に飛び出していきたいもの。
それをいつまでも抱っこしていたら降りて歩くことも出来ない。
子どもが自分から求めてくる抱っこと、大人の都合で抱っこする行為は意味が異なります。
もし、「この子、いつまでも離れないんです。」という子がいたら、向き合い方が良くないのかもしれません。
他の作業の片手間で抱っこしていませんか。
その子の抱っこして欲しい気持ちを理解していますか。
なぜ不安なのか、その子としっかり向き合って抱っこしたら、安心するはずなんです。
離れないとしたら、まだ安心していないのかもしれません。
どうしたら安心するか考えてアプローチを変えることで案外簡単に離れていくかもしれません。
それから先ほど「身体拘束」というきつい言い方をしましたが、赤ちゃんの場合、歩けないのでどうしても抱えて移動させないといけません。
そんな時でも後ろから黙って抱え上げないでねとまた違う保育園の園長先生が仰っていました。

赤ちゃんでもちゃんと人格があるの。
誰だって急に後ろから抱え上げられたらびっくりするでしょ。
ちゃんと前に来て、「抱っこしようね。」とか「あっち行ってマンマにしようね。」ってちゃんと声かけてから抱っこしてあげてね。

私たちが対象とする子どもたちはモノではありません。
小さくても人格を持った存在です。
抱っこ一つとっても、人権を侵害してないかな?人格を尊重しているかな?どうして泣いているんだろう?と考え、しっかり抱っこしていくことで随分子どものことが分かってくることでしょう。

抱っこは子どもが求めてきたら、どんどんしましょう。
子どもが抱っこを求めてきたら、その子の欲求の本質を考えるようにして、どうして抱っこして欲しいのか、何が不安なのだろう、どうしたら安心できるかいろいろ試してみましょう。
理屈で理解しようとするのではなく、おろおろしたり、困ったり、悩んだ末に子どもが抱っこを求めてきた理由が分かってくるかもしれません。

これが子育てや保育の難しいところです。
でも、子どもが求めてきたらどんどんしてあげましょう。

次回は「抱っこやスキンシップ、身体接触が脳の発達を促す」です。
お楽しみに!

森のようちえんの滝山ネイチャークラブ
代表 堀岡 正昭

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