「行きたくない」
そう言うことがあります。
親も先生も困ってしまい、どうしたらいいか分からなくなります。
東京学芸大学の心理学の大河原先生は、
「子どもが転んで泣いているのに、『痛くない、痛くない』とか『男の子なんだから泣かないの』なんて言ったりしませんか。」子どもは痛くて泣いているのに、外から「痛くない」と言われたり、「男の子なんだから泣かないの」と言われたりすると、感覚や感情に蓋をしてしまうことになり、よくないと仰います。
共感的態度
では、どうしたらいいか。
まずは、共感的な態度で「痛かったね。」と伝え、「ここで転んだから痛かったんだね。だから泣いているんだね。」と言葉で泣いている理由を伝えてあげることが大事だということです。
保育的にも倉橋惣三はその著書「育ての心」で「泣いている子がいる。涙を拭いてやる。泣いてはいけないという。なぜ泣くのかと尋ねる。弱虫ねえという。・・・随分いろいろなことはいいもし、してやりもするが、ただ一つしてやらないことがある。泣かずにはいられない心もちへの共感である。お世話になる先生、お手数をかける先生、それは有り難い先生である。しかし有り難い先生よりも、もっとほしいのはうれしい先生である。そのうれしい先生はその時々の心もちに共感してくれる先生である」と述べていますが、私たち保育者にとってもっとも重要な心構えの一つです。
聞いてみる
このように泣いている理由が分かっている場合はいいのですが、「行きたくない」理由を実は本人もよく分かっていないことがあります。
そんな時は、聞いてあげてみてください。
「どうして行きたくないのかな?」
答えはすぐに出なくてもいいのです。
子どもが自分自身に
「そういえば、どうして行きたくなかったのかな?」
と自問する自己内対話を促すことが大事なのです。
それでもなかなか答えてくれないときは、
「こうかな?」
「それともこういう理由かな?」
と聞いてみます。
なかなか言葉では言えなくても、違うときは「違う!」と言ってくれますので、段々と核心に迫ることが出来ます。
そのうちに、理由が分かったら、
「そうか、こういう理由で行きたくないんだね。」
と言葉で伝えてあげることが重要です。
「自律」の力を獲得するプロセス
大人 ①発達年齢に即した妥当な守るべき「枠組み」を示す。
子ども ②枠組みにぶつかって不快感情を表出する。
大人 ③不快感情を承認するが、枠組みは変えない。
子ども ④きちんと葛藤する。
子ども ⑤自己の抑制の制御 ⇒ 自律
(引用 東京学芸大学 大河原美以)
ここで重要なのは、子どもには泣く自由と権利があることを認め、しっかり不快感情を表出させることと、大人が容易に枠組みを変えないこと、そして子どもにしっかり葛藤体験をさせることだそうです。
保育者の私たちは、嫌だな、行きたくないなといった不快感情も受け止め、共感的な態度で子どもと向き合い、子ども自身が葛藤を経て自律=大きくなろうとすることを応援していきたいと思います。
子どもも葛藤を経て、必ず大きくなります。
振り返ってみたら、「なんであんなに嫌がってたのかね。」となるかもしれません。
それでも今、「行きたくない」理由と闘っている子どもたち自身と、保護者の皆様を応援しています。私自身の理解不足と言葉足らずでうまく伝えられているか不安でもありますが、「困っている」をそのままにせず、何とかお力になれたらと思っています。何かございましたら、どうぞお気軽に「ちょっといいですか」とお声がけください。多くの子どもたちを見てきたエピソードならいくらでもお伝え出来ます。保護者の皆様の不安と心配を少しでも軽減できるよう豊富なデーターベースからヒントを引き出し、お伝えしていきたいと思います。
滝山ネイチャークラブ
代表 堀岡 正昭
脳の感情制御のしくみや心理については大河原先生の書籍や講演でご確認ください。