のこぎりに限らず、子どもがやっていることに対して何か問題があったり、もっとこうした方がいいよ、と思う場面で注意した方がいいのはどういうときでしょうか。
それはその子にとって望んでいることかどうかということです。
例えば、どんなに正しいことでも対象者にとっては望んでいないということがあります。
その子のやり方があるということです。
どんなに「こうした方がいいよ」と思って、相手のことを思って言ってあげたとしても、相手が望んでいなければ「余計なこと」になってしまうのです。
その子自身も、「何かうまくいかないなあ」「どうしたらいいのか分からない」と思っていることは比較的人は他人の言うことに耳を傾けるものです。
でも、自分では「これでいい」と思っていることを「あなたのやり方は間違っている。本当はこうした方がいいのに」と言われても、嫌悪感を示したり、聞く耳を持たないというのは自然なことです。
これは子どもに対してもあてはまることで、その子自身が「これでいい」と思っているか、「これでいいのかな?」と思っているかどうかで、こちらの話を聞いてくれるかどうか違ってきます。
もしも危険につながらないのであれば、その子自身の考えややり方を尊重して、無用な口出しをしないというのも、人権を大事にするという点で大事なことです。
「やりたい!」と意欲的に取り組んでいる子どものこともしっかり観察してあげることで、問題やその子が気づかない危険を指摘してあげることが出来ます。
危ないことはその子のやり方を尊重するというのではなく、ちゃんと危険を回避する方法を伝えることがその子を守ることになります。
でも、危険につながらないことであれば、その子のやり方、考え方を尊重し、言いたいのを我慢する。
その上で、その子自身が「うまくいかない」「どうしたらいいんだろう」「いい方法がないかな」と思っているとしたら、そこをちゃんと伝えてあげることです。
それが、伝えてあげるべきことです。
それはちゃんと聞いてくれます。
だって、教えてくれることを望んでいるからです。
相手の人権を尊重するということはやり方、考えを尊重し、たとえ間違っている、失敗すると分かっていても、言いたいことをぐっとこらえて、しっかりと見守るというのが本当の意味で相手を大事にするということなのではないでしょうか。
危ないことは止めつつも頭ごなしに相手の尊厳を踏みにじるような言い方はしないこと。
たとえ間違っていると思っても、相手の考えややり方を尊重し、我慢する。
その上で相手が何を望んでいるのか、内面に迫り、相手が望んでいることであれば、正しい方法を伝えるということ。
のこぎりの切り方ひとつとっても、相手との信頼関係、人権尊重ということがとても大切になってくるということです。