心を育てる、とは言いますが、心というものをもう少し細分化して検証しないと曖昧になってしまいます。
ここでは、「感情」と「言葉」、「感性」という視点で考えてみたいと思います。
まず、感情については、臨床心理の研究が進み、分かってきたことがあります。
それは感情をコントロールする力は、身体感覚と感情を十分に受け止めてもらう経験が必要だということです。
例えば、転んで泣いている子には、痛くて泣いている子どもの気持ちに寄り添い、さすったり、優しく触れたり、「痛かったね」と言葉で返してあげることだそうです。
逆に、「痛くない、痛くない」とか「男なんだからそれぐらいで泣かないの」や「よく見ていなかった自分が悪いのよ」などと、脳の認知機能に働きかける言葉がけは注意が必要です。
自分自身の身体感覚は「痛い」と感じているのに、外部から「痛くない」と言われてばかりだと、脳が錯覚を起こしてしまいます。
泣きたい気持ちなのに、「男の子だから」とか「もう大きいんだから」などと概念による外部からのコントロールは子ども自身が無意識に感情を抑圧してしまいます。
自分の感情を我慢することで、周りが求める姿を演じることは心と身体の乖離を生みます。
心理学の研究を待つことなく、私たちは今までも実践してきたことではありますが、より丁寧に、子どもの気持ちに寄り添い、表情や態度、言葉でその思いを伝えていくことが感情を育てることにつながるのです。
このことは一見、負の感情であっても同じです。
怒ってパニックになっている子にも、「何で怒っているの!」「自分が悪いんでしょ」ではなく、怒っている理由が分からなければ、「どうしたの?」と聞いて、怒っている理由が分かっているのであれば、「使っていたおもちゃを取られたから怒っているんだよね」「一番になれなかったから怒っているんだね」と、その子が怒っている気持ちに寄り添い、言葉で返してあげることです。
そうすると、彼、彼女の脳内では、(そう、そうなんだよ。だから怒っているんだよ)といったフィードバックが行われ、丁寧にこうした体験を繰り返すことで、パニックにならずに、自分の感情を押さえたり、言葉で伝えることで問題を解決していけるようになります。
一度や二度でうまくいくとは限りませんが、少なくとも、気持ちに寄り添ってもらった体験は彼ら、彼女らの安心につながります。
保育の現場や子育てはそうそううまくいくとは限りません。
大変なことの連続です。
しかし、困っているのは子ども自身です。
私たちは、子どもと関わる専門家として、子どもの心理状態を見極めるプロフェッショナルです。
(これは受け止めてあげないといけないな)
(この問題行動に対しては厳しく注意しないといけないな)
この対応を間違えると最悪です。
長年子どもと向き合っている専門性とは、それを見誤ることが確立として低いということです。
もちろん、万能だとは思いません。
私たちも間違えることがあります。
だから、複数で対応するのです。
だから、事後の振り返りを大事にするのです。
(次はもっといい関わりをしよう)
私たちの経験と知識を、お父さん、お母さんたちに還元して、「楽しい子育て」「怒らない子育て」「幸せな親子関係」に貢献できればと思います。
子育ては価値がある。
そのことが社会に深く認知され、子育てを支援してもらっているという実感がわくことこそが本当の意味での支援です。
私は、子どもを育てることが誇りを持って喜びとなるよう精いっぱい支援してまいります。
10月14日(日)森のようちえん子育て講座の補足を兼ねて
滝山ネイチャークラブ
森のようちえん
代表 堀岡正昭