【手作りへの思い】はじまりは「不思議!」

私の母はお菓子、パン等なんでも手作りをしてくれる人でした。

小さいながらに「お店で買うものをお家で作れるなんてすごいな~」と思って食べていました。

もちろん、全部おいしかったです。

そのうち、どうやって作っているんだろう?と母が立つキッチンを覗くようになりました。

 

クッキーやケーキの影も形もない、サラサラした小麦粉、冷え固まったバターが並び、

どんどんボウルに入れられて、混ぜられていく様子を見て、

なんて不思議なんだ!!

と思い、姿形を変えていく食材たちが面白くてしょうがなかったです。

少しずつ手伝うようになり、作るメニューによって混ぜ方や材料を入れる順番が違うことを知り、

私の興味は止まりませんでした。

 

私が一人でお菓子を作るようになると、時間帯によっては、

その隣で母が食事の準備をし始めることもありました。

お菓子作りの延長線上で料理も手伝うようになり、はじめは簡単なパン粉付けから、

カレーのルウを入れて、うちに味見係になり、灰汁取り係もできるようになり、ピーラーで皮をむくようになり、包丁も持たせてもらえるようになりました。

未だに実家に帰ると、母は料理を一緒にしていた頃と同じように、

「悪(灰汁)と戦うぞー!!

と言いながら、灰汁取りをしてくれます。笑

 

今でも覚えているのが、大根を初めて切った日、最初に母が切り方を教えてくれた時に、

薄く切った大根をキッチンの照明にかざして、

「この白い線が食物繊維だよ~」 と、見せてくれました。

食物繊維って見えるんだ!!!と、衝撃が走りました。

 

カレーにチョコレートを入れると美味しくなることを教えてくれたのも母。

“コク”という言葉、その味わい、深さを教えてくれたのも母。

人参にはβカロテンがたくさん含まれていることを教えてくれたのも母。

口内炎にはビタミンBCが効くと教えてくれたのも母。

鉄分を摂るにはレバーやほうれん草がいいと教えてくれたのも母。

豚肉の脂はビタミンB1が豊富だから脂肪にならないことを教えてくれたのも母。

 

興味を持って、自分から手伝いに行ったのは私自身ですが、

それを大事に大事に育て、伸ばしてくれたのは間違いなく母です。

 

小学6年生の夏休み、大嫌いな自由研究は大好きなお菓子作りに変わりました。

5年生の誕生日に母が買ってくれた分厚いお菓子のレシピ本を読みあさり、

夜に翌日作るお菓子を決めて寝て、材料の買い出しから始める生活をほぼ毎日していました。

作ってはノートにレシピを書き写し、出来上がった写真を撮って、感想を書いて・・・・

その中から何品かを画用紙にまとめて研究結果として提出しました。

特別な賞をもらったとか、先生に褒められただとか、そういったものはありませんでしたが、

何よりも自分が楽しめたということと、大人になって振り返った時に、作る楽しさだけではなくて、

それを楽しみに待ってくれている人や、食べてくれた人の笑顔、おいしいという一言が、

自分にとってとても価値のあるものなんだと感じることができました。

 

「わかの好きなお菓子作り、自由研究のテーマにしたらいいやん!」

と、提案してくれたのは母でした。

研究テーマになるとは思っても見ませんでしたが、レシピ本を買い与えてくれた時から、

母には私の中の何かが見えていたのかもしれません。

たまに横に来て様子を見て、上手だね!と褒めてくれていましたが、

私の「上手」よりも、「楽しい」を大事にしてくれていた気がします。

 

中学3年生の時、テレビでお菓子メーカーの商品企画会議の取材風景を見た瞬間に、

私の将来の夢は決まりました。

自分の大好きなお菓子を自分が想像するままに作って、世の中に出すこと。

そのためには、食べ物の勉強をしなきゃ!というところに行きつき、栄養のことにも興味があったので、

栄養学科を目指すことにし、高校でのコース選択、大学入学へと繋がりました。

高校の時も大学の時も、私は早く社会人になりたい!と言っていました。

勉強は大嫌いでしたが、夢を叶えた自分ばかりを想像して頑張っていました。

もちろんその裏には、放課後から塾の時間までに食べる母のおにぎり、毎日夜遅い塾からの帰りに合わせて出してくれる母の手料理、深夜の勉強のお供にと出してくれた母の手作りのカフェオレがありました。

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