森のようちえんが全国に広まり、これからは質の向上が求められます。
森のようちえんはこれからの幼児教育をけん引していく保育です。
私は、全国の森のようちえんと広く社会に対して提言したいと思います。
森のようちえんの業界の質を高めるための提言です。
子どもの人権を尊重する
・プライバシーに配慮する。
親が我が子を自分のSNSにアップするのと違い、私たちは保育の専門家として子どもと関わっています。
専門職として子どものプライバシーに配慮しましょう。
お泊り保育のお風呂の場面など、以前は微笑ましく受け取ってもらえることがあったかもしれませんが、子どものプライバシーに配慮しているとは言えません。
子どもの裸をネットに掲載する行為、撮影を禁止することを強く求めます。
・人格を尊重する。
名前の呼び捨てを禁止し、敬称をつけて呼びましょう。
その子の人格を尊重し、敬称をつけて呼ぶことは保育技術です。
敬称をつけて呼ぶことを習慣化し、子どもと保護者と信頼関係を結ぶ基本を徹底しましょう。
注:敬称については、多文化の理解も必要です。外国にルーツを持つ子どもたちを受け入れてきて、必ずしも敬称を付けて呼ぶことが尊重とは言えないこともあります。また、男の子は君付け、女の子はちゃん付けといった慣習も見直す必要があると考えます。将来的には男女関わらず、さん付けの方がいいとは思います。現在の日本では慣習も根深いことから、一般的な男の子は君付け、女の子はちゃん付けといった敬称で呼ぶことが多いですが、家庭環境や文化の違い、個性に応じて、いづれにしても個の尊厳を大事にし、その子一人ひとりの名前で呼んであげたいものです。
安全を最優先する
・水辺の活動の際にはライフジャケットを着用する。
海や河川など特に危険が高いフィールドや活動においてはライフジャケットを着用することを基本とします。
・安全のためには活動を中止する勇気を持つ。
様々な事情から活動を中止するには困難な事もあります。それでも命より優先する判断基準はありません。
迷ったら止まる。安全のための中止は後退ではなく勇退です。
判断を誤らない価値基準を持ちましょう。
・怪我を防ぐための説明責任を果たす。
野外での活動の場合、特に幼児の活動である森のようちえんにおいて怪我を完全に防ぐことは不可能です。
しかし、怪我の責任を個人(子ども本人や保護者)に負わせるのではなく、怪我を防ぐための対策・対応の説明責任は森のようちえん側にあると考えます。
怪我は仕方がないとしても、それを防ぐための対策や対応をどのように行っていたか、または行っているかといった丁寧な発信が保護者の安心と社会からの理解につながります。
保護者・社会への価値発信
子どもを自然の中で育てることへの理解とその価値を丁寧に伝えていく必要があります。
それぞれの立場で子どもが自然の中で遊ぶことの価値を伝え、森のようちえんを広めていく責務があると感じます。
ウェブやメディア、書籍などありとあらゆる方法を活用し、保護者や社会へと森のようちえんの価値を積極的に伝えていきましょう。
森のようちえんとしての保育方法
・少人数で子ども一人一人を大事にした保育
大集団による一斉画一的な保育から、少人数で個性や個別の発達に配慮した保育を目指します。
・子どもの主体的な行為を尊重した保育
子どもの人格を尊重し、子どもの主体的な行為を尊重した保育を目指します。
大人主導の保育から、子ども主体の保育への転換です。
・教育方法としての遊びを基本とした保育
情報を与え、知識を伝達する教科教育ではなく、遊びを通して子どもが自ら学ぶ経験カリキュラムを採用し、子どもと遊びを観察し、対象に応じて環境に働きかけていく保育(Guided play)を基本とします。
保育者の地位と尊厳を守る
・高い専門性を発揮
保育は高い専門性と技術が要求される高度な技術職です。そのためには、保育者は経験を積み重ね、専門性を発揮することで保育者の地位を確立しましょう。
・事業継続性
1人の保育者の思いや短期的な成果ではなく、長期的な計画に基づき、事業が継続されるシステムの構築が保育の質を左右します。職員配置や研修制度、また非常時の対応など園としての構造の質を高めることが森のようちえんの信頼につながります。
・社会的評価
働く労働者としての保育者の待遇改善が業界全体の質の向上に寄与します。保育者の尊厳を守り、労働条件を改善し、質の高い保育を目指す職場の形成が社会的評価となります。
私たちは保育者個人の地位と尊厳を守り、保育者自身の技術の向上と専門性を高めることを求め、森のようちえんが業界として質の高い保育を提案していくことにつなげていくことを目指します。