僕たちの専門性とは何かと考える。
確かに子どもの事や野外の事など多少は専門的な勉強はしてきた。
子どもとの関わり方など専門的な技術も多少は持っているつもりだ。
20年以上、子どもと関わる仕事に携わり、経験も積んできたつもりだ。
でもそれがあからさまに見える保育はだめだと思う。
なぜなら、森の中での活動は子どもたちが中心で、彼らが主体的に取り組む遊びでないと、その教育的効果は期待出来ないからだ。
僕たちが目立っちゃいけないのはそのためで、教育とは人格の完成を目指し、その目的達成のために尽くすことが専門職である我々の役割なのだ。
決して自己満足で携わってはいけない。
そうだけど、その専門性を発信して、共有していくことが、業界の質の向上、引いては、子どもたちの教育の向上につながると思えばこそ、明らかにしていかないといけないこともあると思う。
森のようちえんでは、自由な遊びを大事にしているので、大人の働きかけはあまり目立たないのだけれど、実は様々に働きかけていることが分かる。
それは、1つに環境に働きかけている。
「子どもの状態や遊びの様子を見て、環境を再構成していくこと」
2つ目は、子どもと遊びに働きかけている。
「遊びの状態や子どもの内面の変化を読み取り、適切に働きかけていくこと」
3つ目は安全を管理している。
「子どもの発達や個性を見極め、やりたい意欲を大事にしながら安全を保障すること」
子どもをよく見る専門性とは、子どもが問題行動を起こさないか監視することではなく、子どもと遊びを観察し、子どもの内面の変化に気づき、遊びの状態を見極めることです。
だから専門性が高い保育者は子どもを観察する態度や動作、子どもとの距離感が違います。
そして、子どもの状態や遊びの様子を見て、色々に環境を操作しているはずなのです。
物をどけたり入れたりしてみたり、さりげなく他の子の声を拾ったり、自ら人的環境となって様々に働きかけて環境を再構成しているはずなのです。
ずーっと環境をそのままにはしていないはずなのです。
なぜなら、子どもは刻一刻と変化するからです。
その変化する子どもに合わせて環境を再構成していく力、それが保育者の専門性です。
また、専門性の高い保育者は子どもに合わせて、環境に働きかけています。
特に遊びの盛り上がりを見計らって、子どもがスムーズに活動の切り替えが出来るように声をかけています。
遊びの状態を配慮することなく、時間だからとか、みんながそうしているからという理由で、子どもの行動を規制しようとするから切り替えが出来ないのです。
森のようちえんのように子どもたちが自由に活動していると、子どもたちの興味や遊び、盛り上がりも様々です。
僕が考える専門性とは、このいわば点でバラバラの状態の遊び空間をまるで大きな生き物のように全体で捉え、適切に一人ひとりに働きかけることで、個人が十分に自分を発揮しながらその集団を一つの目的に向かわせる船頭のような存在です。
子どもたちのありのままを受け止めながら、子どもたちのあるべき姿、向かうべき方向を自分たちで決め、行動していくことを応援することです。
「やりたい意欲を大事にしながら安全を保障する」
この一見相反する視点を高度に目指していくことこそが僕たちの考える専門性です。
果たしてその専門性が発揮できたか、もっといい方法があったのではないか。
明日はもっといい保育を目指そう。
その志向性こそが保育の質です。
滝山ネイチャークラブ
代表 堀岡正昭