「活動終わるときに、笛吹いていないよね。」
ある保育園の園長先生は、「軍隊じゃないんだから、子どもを笛でピッピ、ピーってやって動かさないでね。」とおっしゃっていました。
子どもを笛で動かすことに違和感を感じられるということが大事です。
子どもも笛で動かされることに抵抗ない子どもには育ててはいけないということです。
「集まって欲しかったら、『こっちに集まってー』って言えば、子どもは集まってくれるわよ。」
それを笛が鳴ったら集まりなさい、なんてパブロフの犬じゃないんだから、そんな笛で子どもを動かすなんて先生としての力量のなさを自分から言っているようなものです。
だから、園外に遊びに行って、活動を終えて、子どもを集めるときに、笛を吹いて終わりを知らせ、集めていないよね、ということなのです。
「じゃあ、どうやったら集められんですか?」と質問が来そうですが、経験ある先生は笛なんかに頼らなくても子どもを集めることができます。
「そろそろ終わりにして、帰ろうか。」と。
滝山ネイチャークラブでは、子どもがお腹空いたからお弁当にしようよ、というまで遊びます。
帰りは、「そろそろ帰るよ。」「荷物持って集まってー」というと子どもたちが集まってきて帰る段取りになります。
「そんなのは少人数だから出来るんです。保育園は45人とかいるんでそんなことは出来ませんよね?」
そうでしょうか。
力のある先生たちの園は、笛を吹かなくても子どもを集めることができます。
保育園の自然遊びの時間は、終わりの時間、帰る時間が迫ってくると、それぞれの先生に「そろそろにしましょう。」と声を掛けます。
すると、それぞれの先生が近くの子どもたちに声をかけてくれるので、子どもたちはわらわらと集まってきます。
それぞれの先生が近くにいる子どもたちに声をかけるのには意味があります。
遊びの盛り上がりは一律ではないからです。
盛り上がっている最中のグループもあれば、もう遊びが収縮しているグループ、後もう少しで終わりそうなグループとそれぞれ違うので、言葉がけも異なります。
遊びが収縮しているグループは、「もう帰ろうか。お茶飲んで帰る支度しよう。」となるでしょうし、もう少しで終わりそうなグループには、「楽しかったね。じゃあ、後一回やったら終わりにしようか。」となるでしょう。
遊びが盛り上がっているグループには、少し待ってあげる余裕が必要です。
先生方が予定している終了時間を30分以上待つということは現実的にはありません。(もしあるとしたら、計画が実態と大きく異なっているか、活動に対する先生方の働きかけが不十分だったということです。)
長くて5分、もしかしたら2,3分、ひょっとしたら数十秒ということもあるかもしれません。
子どもたちの遊びが盛り上がり、「楽しかったね!最高だね。また来ようね。」となるまで待つことと、子どもたちの想いに対する先生方の共感的態度が必要です。
本当に共感してくれている、先生も一緒に楽しんでる、そう感じたとしたら、「また来ようね!」となるに違いないのです。
そうならないとしたら、自分たちの働きかけを振り返り、遊びに対する働きかけ、盛り上げ方は十分だっただろうか、楽しかったねという子どもたちの想いに対する共感的態度が不足していたということはないだろうかと反省すべきです。
本来、子どもは大好きな先生たちが「楽しかったね。また来ようね。」と言ったら、「うん、楽しかった!また来たい!」となるはずです。
そうならないことを子どもの性格や発達のせいにしないで、自分たちの保育を省みる先生は、保育技術がますます高まります。
そんな力のある先生は子どもと信頼関係を構築するのも上手です。
子どもに信頼されているから子どももその先生の話をよく聞きます。
子どもを集めるには、多少のテクニックは必要ですが、それ以上に、人として、保育者としての魅力や誠意が必要で、それがある先生の近くにはいつも笑顔の子どもの姿があります。
パワーで子どもを制圧して、言うことを聞かせるか。
それとも、保育者として魅力ある先生となって、自然と子どもが集まる保育者でありたいか。
私は断然、後者の先生でありたいと強く願います。
そんな笑顔の先生が増えることを願って、子どもたちを自然に連れ出していきたいと思います。
滝山ネイチャークラブ
堀岡正昭
